0%

【村上龍さん死去】『13歳のハローワーク』が問いかけたこと。「何のために勉強するのか」を考える

目次

こんにちは。青山予備校、柏原です。

2026年10月23日、作家の村上龍さんが亡くなったというニュースが報じられました。

74歳でした。

『限りなく透明に近いブルー』『コインロッカー・ベイビーズ』『半島を出よ』など、数々の作品を世に送り出してきた村上龍さん。

テレビ東京の『カンブリア宮殿』で、その姿を見たことがある方も多いのではないでしょうか。

そんな村上龍さんの著作の中で、教育に携わる私が今回取り上げたいのが、2003年に出版された『13歳のハローワーク』です。

この本は、子どもたちが自分の「好き」や「興味」から、将来の仕事について考えるための職業ガイドです。

出版から20年以上が経過しました。

当時13歳だった子どもたちは、今では30代半ばになっています。

私自身、小さい頃に読んで、私自身の人生観や、職業観にかなり影響を与えた本です。

社会も大きく変わりました。

スマートフォンが普及し、YouTuberという職業が生まれ、

今では生成AIが文章を書き、画像を作り、プログラムまで組む時代です。

それでも私は、『13歳のハローワーク』が投げかけた問いは、今の中学生・高校生にこそ必要なのではないかと思います。

今回は、村上龍さんを偲びながら、勉強する意味、進路選択、そして子どもたちの将来について考えてみたいと思います。

『13歳のハローワーク』とは?村上龍さんが伝えたかったこと

『13歳のハローワーク』は、2003年に幻冬舎から出版された職業ガイドです。

さまざまな仕事を、子どもたちの興味や関心から紹介していることが大きな特徴です。

一般的な進路指導では、

「成績がこれくらいだから、この高校」

「偏差値がこれくらいだから、この大学」

「この大学なら、こういう会社に就職できる」

というように、学校や成績を出発点にして進路を考えることがあります。

しかし、『13歳のハローワーク』は、少し違う角度から仕事を紹介しています。

出発点になるのは、子ども自身の「好きなこと」です。

例えば、

動物が好き。

絵を描くことが好き。

人と話すことが好き。

ゲームが好き。

機械を触ることが好き。

そんな興味から、世の中にはどんな仕事があるのかを知っていく。

偏差値から将来を考えるのではなく、興味から将来を考える。

この発想が、多くの読者に支持された理由の一つではないでしょうか。

「何のために勉強するの?」に、大人は答えられるか

塾で働いていると、生徒からこんな質問を受けることがあります。

「先生、これって将来使うんですか?」

「二次関数って、大人になって使うんですか?」

「古文って、何の役に立つんですか?」

なかなか難しい質問です。

もちろん、数学の二次関数を日常生活で直接使う人は、それほど多くないかもしれません。

古文の知識が仕事で必要になる人も限られるでしょう。

だからといって、勉強する意味がないのでしょうか。

私は、そうは思いません。

勉強する意味の一つは、将来の選択肢を増やすことにあると考えています。

例えば、中学生の段階で数学が苦手だからといって、数学を完全に諦めてしまったらどうなるでしょうか。

将来、理系の学部に進学したいと思ったとき、選択肢が狭くなってしまうかもしれません。

英語が苦手だからといって勉強をやめてしまえば、海外の大学で学びたいと思ったときに苦労するでしょう。

13歳の段階で、将来やりたい仕事が決まっている必要はありません。

むしろ、決まっていない生徒のほうが多いと思います。

だからこそ、今の勉強には意味があります。

将来やりたいことが見つかったときに、挑戦できる自分でいること。

そのために、今の勉強があるのではないでしょうか。

何のために勉強するかについては、以前こちらのブログでも書いています。

→勉強って何のためにするの?

13歳で将来の夢が決まっていなくてもいい

『13歳のハローワーク』というタイトルを聞くと、

「13歳のうちに将来の仕事を決めなければいけない」

と感じる人もいるかもしれません。

でも、私はそう考える必要はないと思います。

13歳で将来の夢が決まっていなくても、まったく問題ありません。

15歳でも、18歳でも同じです。

大学に進学してから、やりたいことが変わる人もいます。

社会人になってから、新しい仕事に挑戦する人もいます。

むしろ、問題なのは、自分の将来について考えることを放棄してしまうことです。

「親に言われたから、この高校に行く」

「先生に勧められたから、この大学を受ける」

「何となく就職に有利そうだから、この学部にする」

もちろん、保護者や先生のアドバイスを参考にすることは大切です。

ただし、最終的にその進路を歩むのは自分自身です。

だからこそ、進路を決めるときには、一度立ち止まって考えてほしいと思います。

自分は、何に興味があるのか。

どんなことをしているときに楽しいと感じるのか。

どんな人生を送りたいのか。

すぐに答えが出なくても構いません。

考え続けることに意味があると思います。

「いい大学に入れば安泰」という時代ではない

村上龍さんは、『13歳のハローワーク』公式サイトでの対談の中で、よい学校、よい大学、よい会社に進めば人生が安定するという考え方に疑問を投げかけています。

学歴や企業名だけで将来の安定を保証できるわけではない、という問題意識です。

私は、この考え方に共感する部分があります。

ただし、塾で働いている立場として、少し付け加えたいこともあります。

それは、学歴に意味がないわけではないということです。

大学受験を通じて得られるものは、大学の卒業資格だけではありません。

学力。

学習習慣。

目標から逆算して行動する力。

苦手なことに向き合う力。

そして、希望する進路に挑戦できる可能性。

こうしたものにも価値があると考えています。

難関大学に進学したからといって、将来の成功が保証されるわけではありません。

一方で、大学で何を学ぶか、どんな人と出会うかによって、人生の選択肢が広がることもあります。

私が生徒に伝えたいのは、

学歴を人生のゴールにするな。でも、学ぶことの価値まで否定するな。

ということです。

2026年、AI時代に『13歳のハローワーク』を読む意味

2003年に『13歳のハローワーク』が出版されてから、20年以上が経ちました。

その間に、社会は大きく変わりました。

当時は一般的ではなかった仕事が、今では身近な職業になっています。

YouTuber。

SNSマーケター。

データサイエンティスト。

AIエンジニア。

一方で、AIの進歩によって、今後仕事内容が大きく変わる職業もあるでしょう。

では、これからの中学生・高校生は、どのように将来の仕事を選べばよいのでしょうか。

私は、職業名だけで将来を考えないことが重要だと思います。

例えば、「医師になりたい」という生徒がいたとします。

なぜ医師になりたいのでしょうか。

人を助けたいから。

人体の仕組みに興味があるから。

研究が好きだから。

安定した収入を得たいから。

理由は人によって違います。

そして、その理由によっては、医師以外の仕事にも魅力を感じるかもしれません。

人を助けたいのであれば、看護師、理学療法士、社会福祉士などの仕事もあります。

研究が好きなら、医学研究者や生命科学の研究者という道もあります。

職業名を知ることと、自分が何をしたいのかを知ることは、同じではありません。

AIによって仕事の形が変わっていく時代だからこそ、自分の興味や価値観を理解することが大切になるのではないでしょうか。

将来の夢がない中高生におすすめしたい5つのこと

ここからは、将来やりたいことが決まっていない中学生・高校生に向けて、私なりのアドバイスを紹介します。

1. 世の中にどんな仕事があるのかを知る

まずは、仕事の種類を知ることです。

医師、教師、公務員、会社員。

こうした身近な仕事以外にも、世の中にはさまざまな職業があります。

『13歳のハローワーク』のような職業ガイドを読んでみるのもよいでしょう。

知らない仕事は、将来の選択肢に入りません。

2. 好きなことを言葉にしてみる

「ゲームが好き」

「スポーツが好き」

「動物が好き」

それだけでも構いません。

ただ、もう一歩踏み込んで考えてみましょう。

ゲームの何が好きなのか。

プレイすることなのか。

攻略方法を考えることなのか。

キャラクターをデザインすることなのか。

同じ「ゲームが好き」でも、興味の方向は人によって異なります。

3. 実際に体験してみる

仕事について調べることも大切ですが、実際に体験することで分かることもあります。

学校の職場体験。

大学のオープンキャンパス。

地域のボランティア活動。

企業や大学が開催する体験イベント。

興味があることには、積極的に参加してみましょう。

頭の中で考えているだけでは分からないこともあります。

4. 苦手なことを、すぐに諦めない

「数学が苦手だから、理系は無理」

「英語が苦手だから、海外で働くのは無理」

そんなふうに、自分の可能性を早い段階で狭めないでほしいと思います。

もちろん、得意不得意はあります。

ただし、今できないことが、将来もできないとは限りません。

苦手なことでも、勉強を続けることで得意になる場合があります。

5. 自分の頭で考える習慣をつける

最後に、一番大切だと思うことです。

最近は、分からないことがあれば、すぐに検索したり、生成AIに質問したりできます。

もちろん、便利な道具を使うことは悪いことではありません。

ただし、答えを教えてもらうことと、自分で考えることは違います。

AIが出した答えを、そのまま自分の意見にしてしまう。

検索結果の一番上にある情報を、何も考えずに信じてしまう。

それでは、自分の進路まで他人任せになってしまうかもしれません。

情報を集めることと、自分で判断することは別です。

便利な時代だからこそ、自分の頭で考える習慣を大切にしてほしいと思います。

高校選びも大学選びも、「その先」を考えてほしい

青山予備校では、小学生から、高校生まで、学習支援を行っています。

その中で、私が大切にしたいのは、合格した後のことです。

例えば、膳所高校に合格したい。

石山高校に合格したい。

守山高校に合格したい。

もちろん、素晴らしい目標です。

ただし、高校に合格したら終わりではありません。

高校に入学してから、どんなことを学びたいのか。

どんな大学に進学したいのか。

大学で何を学びたいのか。

そして、その先でどんな人生を送りたいのか。

そこまで考えてほしいと思います。

大学受験も同じです。

京都大学に合格すること。

大阪大学に合格すること。

同志社大学や立命館大学に合格すること。

それ自体は、立派な目標です。

でも、大学に合格することだけが人生の目的ではありません。

高校も大学も、人生の目的地ではなく、通過点です。

だからこそ、受験勉強を頑張ってほしいと思います。

将来やりたいことが見つかったときに、挑戦できる可能性を広げておくためです。

まとめ|『13歳のハローワーク』が教えてくれたのは、職業の選び方だけではない

村上龍さんの訃報に接し、改めて『13歳のハローワーク』について考えてみました。

この本の魅力は、単に多くの職業を紹介していることだけではないと思います。

自分の好きなことを知ること。

世の中の仕事を知ること。

自分の将来について考えること。

そして、自分の人生を、自分で選ぼうとすること。

こうした姿勢の大切さを、子どもたちに伝えているのではないでしょうか。

私は、勉強にも同じことが言えると思います。

親に言われたから勉強する。

先生に怒られるから勉強する。

テストで悪い点数を取るのが嫌だから勉強する。

もちろん、最初はそんな理由でも構いません。

でも、いつかは自分のために勉強できるようになってほしい。

誰かに勉強させられる人生から、自分で学ぶ人生へ。

青山予備校が目指しているのも、そんな学習のあり方です。

塾は、子どもたちの人生を決める場所ではありません。

子どもたちが自分の人生を選べるように、その可能性を広げる場所でありたいと思っています。

村上龍さんが『13歳のハローワーク』を通して問いかけたこと。

それは、これからのAI時代にも通じる、大切なテーマだと思います。

村上龍さんのご冥福を心よりお祈りいたします。